元ネタとしてよく使われるクトゥルフ神話の言葉まとめ ~宇宙的恐怖~

クトゥルフ・ハスター・ナイアルラトホテップ・ネクロノミコン……ホラー系作品を中心に日本でも大人気ですよね!

By Dominique Signoret (signodom.club.fr)) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 , via Wikimedia Commons

なお、クトゥルフ神話における神々の名前は「人間には発音不能な音を無理やり表記したもの」という設定であり、なおかつ作家ごとのブレもあります。

この記事で使う名前も代表的なものの1つにすぎないことはご了承ください。

旧支配者(古き神々、古き者ども)

旧支配者(Great Old One)、とはかつて太古の地上を支配していたと設定されている存在。

当初のラヴクラフト作品においては、これらは善悪で判断できる存在として描かれていない。ラヴクラフトの死後、その設定を引き継いだダーレスにより、善の旧神と対立する邪神とされた。

ダーレスによる設定では、旧支配者はそれぞれ四大元素(火、水、土、風)のいずれかに属し旧支配者同士の対立も存在。

現在は活動が制限されているが、星辰(星の並び)の変化の影響とも旧神との戦いに敗れて幽閉されているとも。いずれにせよ、眷属や信者が主の復活を画策中。もしも旧支配者が復活すれば、人類の文明などあっけなく滅ぼされてしまうとされる。

 

クトゥルフ(Cthulhu)……クスルー、トゥールー、九頭龍などとも。タコに似た頭部、イカのような触腕を無数に生やした顔、巨大な鉤爪のある手足、ぬらぬらした鱗に覆われた山のように大きなゴム状の身体、背にはコウモリのような細い翼を持った姿をしているとされる。

海底に沈んだ古代の石造都市ルルイエに封印されている。ルルイエの浮上する時期には、クトゥルフの夢がテレパシーによって外界へ漏れ、ある種の精神的なショックを世界規模で発生させる。

ダーレスの分類によると水神だが、ラヴクラフトによる元もとの設定では、拠点であるルルイエごと水没しているだけ。水棲種族の「深きものども」から信奉されている描写はあるが、水や水棲の者を統べるといった要素は少ない。クトゥルフ自身の持つテレパシー能力も、大量の海水によってほとんどが遮られているとされる。

By BenduKiwi (authorupload) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 ], via Wikimedia Commons

ダゴン(Dagon)……魚のような下半身をもつ巨大な存在。クトゥルフに仕える従者として位置づけられ、クトゥルフ神話での知名度がもっとも高い邪神の1つ。旧支配者の中ではやや格下。「深きものども」からは信仰される。

「ダゴン」という名前のさらなる元ネタは、古代パレスチナにおいてペリシテ人が信奉していた神。

ガタノトーア(Ghatanothoa)……ユゴス星の生物が崇拝し、彼らと共に地球にやって来た神性。クトゥルフの三柱の息子であり、一番上の息子とも言われる。一目見たものは肌が石化してしまうが、脳だけは半永久的に生き続ける。

ハスター(Hastur)……「名状しがたいもの」「名づけざられしもの」「邪悪の皇太子」などの別名がある。本体の姿は不明。ヨグ=ソトースの息子。眷属は、イタクァ・ロイガー・ツァール・バイアクヘー・ミ=ゴなど。

ダーレスによると四元素の「風」の邪神であり、水神であるクトゥルフと対立する。

おうし座にあるヒアデス星団およびアルデバランと関連付けられる。ヒアデス星団にある古代都市カルコサ近くの「黒きハリ湖」に棲んでいる、あるいは幽閉中とされる。

本体とは別の姿(化身)として活動することも。化身の中で代表的なのは「黄衣の王」。

クトゥグア(Cthugha)……地球上に現れる時は「生ける炎」の姿。地球から25光年離れた恒星「フォーマルハウト」を住処にしているとされる。ナイアーラトテップの天敵であるとされ、かつて地球上に召喚された際には拠点であるンガイの森を焼き尽くした。

ダーレスがクトゥルフ神話に四元素の設定を持ち込んだ時、火の邪神がいなかったため追加された。そのためクトゥルフ、ハスター、ナイアルラトホテップに比べるとやや知名度が低い印象。

外なる神

The Outer GODS。いわゆる「旧支配者」とは別格の、さらに上位の存在。

元々は単数でヨグ=ソトースを指す言葉だった。1980年代にケイオシアム社のTRPG『クトゥルフの呼び声』で使われ、そこから広がる。よってラヴクラフト、ダーレスなどの創始者時代には一般的な分類ではない。

 

ナイアルラトホテップ(Nyarlathotep) ……アザトースの息子であり、外なる神々たちのメッセンジャー。ダーレスの分類だと地属性。

旧支配者たちと違い封印されておらず、外なる神々のくせに気軽に地球へ現れる特異な神格。活動も眷属たちを通すのではなく自分で動くことが多い。直接的な攻撃ではなく、相手が自ら自滅するように誘導する。クトゥルフ神話におけるトリックスター。

顔がないとされ、はっきりした姿は不明。一応「這い寄る混沌」と呼ばれる形態は、触腕、鉤爪、手が自在に伸縮する無定形の肉の塊と咆哮する顔のない円錐形の頭部を持っているとされる。

さまざまな化身の姿を持っており、人間として活動していたりも。この化身は複数が同時に存在できて意識も別々。化身同士での殺し合いなどが起きたりする。

By Jens Heimdahl – www.facebook.com/jens.heimdahl (Own work) [CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons

アザトース(Azathoth)……万物の王である盲目にして白痴の神。魔王と呼ばれたりも。もとは知性があったが旧神に奪われたという設定や、そもそも善悪を越えた混沌であるなどの説がある。

全て「存在」というものはアザトースの思考によって創造され、逆にアザトースを見たものは存在の根底を破壊されるとも。現在はアザトース自身が行動することはなく、ナイアルラトホテップが代行者としてその意思を遂行する。

ヨグ=ソトース(Yog-Sothoth)……時間と空間の制限を受けない存在であり「外なる神」の副王とも。一説には虹色に輝く無数の球体が繋がったような姿。銀の鍵を使って儀式をすると「窮極の門」を超えた場所に座すヨグ=ソトースと接触することができる。

旧神

Elder Gods。悪の旧支配者に対する善なる存在。ただし、神によっては旧支配者たちとあまり変わらない行動を取ったりも。

開祖ラヴクラフトではなく、ダーレス発祥のアイディア。ダーレスの設定では、邪悪なる旧支配者は善なる旧神と地球の支配権を賭けて戦い、ついには敗れ、そして地球や宇宙の各地に封じられているとする。

ダーレスに由来し、なおかつクトゥルフ神話の主軸である恐怖とも別方向の存在のため作品の中で直接活動することは少ない。

ノーデンス(Nodens)……旧神の代表的存在とされることが多い。貝殻の戦車をイルカや馬のような生き物にひかせている。比較的人間に友好的だが、存在・判断基準が違いすぎるため問題が起きることも。

その他の種族

特定の神格を信仰している場合は「~の奉仕種族」と呼ばれることも。

深きものども(Deep Ones)……クトゥルフ・ダゴンの奉仕種族。人と交配して種族を増やす。 そうして生まれた人間は誕生から一定期間は普通の人間のような姿をしているが、同族との接触あるいは過度のストレスなどによって「インスマス面」と呼ばれる、深きものども特有のカエルのような顔になってしまう。その後は歳をとるたびに顔がどんどん人間離れしたものへと変化していく。

イースの大いなる種族(Great Race of Yith)……イスの偉大なる種族とも。別の生命体と精神を交換する能力をもち、これによって時間や空間を超えることができる。過去・未来の生物とも精神交換が可能。

時間の秘密を解き明かした唯一の生物とされ、その功績から『偉大なる』を付けて呼ばれている。時間を超えているがティンダロスの猟犬に襲われている描写は無い。

科学技術や産業は極めて高度に発展しており、もっぱら知的・芸術活動をしている。その地域の高い地位にある存在と精神を交換し調査を行う。交換された方もイス族の拠点で聞き取り調査をされるが、ショックから立ち直り協力的であれば行動を許されるらしい。

Віщун [Public domain], via Wikimedia Commons

↑現在の肉体

ティンダロスの猟犬(The Hounds of Tindalos)……時間が生まれる以前の超太古、異常な角度をもつ空間に住む不浄な存在とされる。「時間の角」を通り、過去・未来を移動できる。

人間などの普通の生き物が「曲線」を祖先とするのに対し、「角度」を起源に持つ。曲線の生き物が時間を越えようとすると、彼らの領域に接触してしまい獲物として狙われることに。

120度より鋭い角度があれば、どんな場所でも「曲がった時間」に実体化してくる。その時、ひどい刺激の悪臭がする。「猟犬」と呼ばれるが別に犬型ではない。

ショゴス(Shoggoth)……太古の地球に飛来した宇宙生物「古のもの」達によって合成された漆黒の粘液状生物。呪文やテレパシーで操ることが可能。「テケリ・リ、テケリ・リ」(”Tekeli-li, Tekeli-li”)という、独特の鳴き声をする。

元もとは知性が低く、肉体労働のための奴隷として扱われていた。しかし、発生させた脳を自ら固定化することで知能を持つようになり、創造主である「古のもの」に反抗して全面戦争を引き起こした。

 

地名・アイテム・その他

ルルイエ(R’lyeh)……クトゥルフが封じられ、夢見ながら眠る古代都市。異常極まりない非ユークリッド幾何学的な外形を持つ多くの建造物からなる。

太平洋の南緯47度9分 西経126度43分の海底に位置。ニュージーランド・南米大陸・南極大陸の中間付近。

ティンダロス(Tindalos)……時間が生まれる以前の超太古の異常な角度をもつ空間にある、らせん状の塔が建ち並ぶ悪夢のような都市。「ティンダロスの王」と呼ばれる超存在は「角ばった時間」を支配していて、「球の時間」をつかさどるヨグ=ソトースと対立しているとされる。

ヨグ=ソトースは「全にして一、一にして全なる者」とまで表現される存在だが、もしかするとその全能性は「球の時間」の中だけの話なのかもしれない?

ネクロノミコン(Necronomicon)……魔導書。ギリシャ語であり「死者の掟の表象あるいは絵」の意とされる。起源としては西暦730年にアブドル・アルハズラットにより、アラビア語の原書「アル・アジフ」として書かれた。

クトゥルフ神話の書物だか、現在ではそれ以外の作品にも幅広く登場。いわゆる黒魔術の道具としてキリスト教の悪魔などとも関連付けられたり。

 

By Shubi(Shubi) (Self-made just for fun.) [Public domain], via Wikimedia Commons

↑ファンによる再現品。

クトゥルフ神話の書物としては他に、エイボンの書・黄衣の王・屍食教典儀・水神クタアト・セラエノ断章・ナコト写本・無名祭祀書・妖蛆の秘密・ルルイエ異本などもある。

SAN値……Sanity Point、訳せば「正気度ポイント」。原作となる小説群ではなくTRPG「クトゥルフの呼び声 」の用語。

このゲームでは、ショッキングな出来事に遭遇したり宇宙的恐怖に関する事象を「知ってしまった」時に、「正気度ロール」と呼ばれる判定を行う。これに失敗すると正気度ポイントが減っていき、SAN値が減りすぎると発狂状態に。

肉体的なダメージだけでなく、精神的な恐怖・狂気が広がるクトゥルフ神話の世界観を上手くシステムに組み込んだと言えそう。

クトゥルフ神話

ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが始まりとなった作品群。太古に地球を支配していたが強大な力を持つ恐るべき異形のものども(旧支配者)が現代に蘇ろうとしている、という設定が基本。

ラヴクラフトと友人である作家たちの間で、架空の神々や地名や書物等の固有の名称の貸し借りによって作り上げられた。

ラヴクラフト本人が作家ごとの独自の設定を認め、応援したことが特徴。その雰囲気は現在にも伝わっていて、色々な人が色々なクトゥルフ神話世界を書き続けている。よって「クトゥルフ神話」=「ラヴクラフトが書いた作品群」というのは間違った認識。

本人以外ではオーガスト・ダーレスの影響が大きく、善悪二元論や四大元素などの提案した。これらがラヴクラフト直筆の作品と合わないという意見もあり、ダーレスの設定を含まないものを「ラヴクラフト神話」と区別する場合もある。

コズミック・ホラー……訳せば「宇宙的恐怖」。ラブクラフトが提唱した概念でありクトゥル神話の特徴の1つ。

本人は

『私の書く物語はすべて、広い空漠な宇宙においては一般的な人間の法律や興味や感情には何の価値も妥当性もないという前提に立っている』

と書いている。

特にラヴクラト神話の設定だが、旧支配者たちは人間の善悪を越えたもの。敵として戦えるようなものではなく、認識も対応もできない超存在。このあたりにソンビ・吸血鬼などの、いわば「人間と同じレベルに存在する恐怖」「理解できる恐怖」との質的違いがあると言えるのでは。

 

クトゥルフ神話に関連する商品をAmazon.co.jpで見てみる

 

合わせて読みたい! ファンタジーの元ネタシリーズ