『TAS』とは? ゲームだからこその不思議な遊び方!

ゲームソフトをパソコン上に再現して、最適な結果だけをつなぎ合わせることにより、とんでもないタイムアタック・スーパープレイを作り出す! ゲームソフトを使った特殊な遊び!

というわけで、今回のテーマは「TAS」。Tool-Assisted Speedrun(ツール・アシステッド・スピードラン)または、Tool-Assisted Superplay(ツール・アシステッド・スーパープレイ)の略語

ゲームソフトをパソコン上で再現しつつ様々な特殊な操作を行うこと、およびそれを利用した競技のことですね。

 

人間のプレイを超えた、カオスなプレイ!

まぁ、知らない人にTASの雰囲気を知ってもらうには実際に見てもらうのが1番でしょう。私が無駄に長く書くより、直接に見ればすぐに分かります(笑)

↓はTAS業界の中でも特に有名な「スーパーマリオ64」というゲームの動画。


1時間20分と長いのですが、最初の3分も見てもらえればTASってものが何となくでも分かるはず。めちゃくちゃカオス! こんなの私の知ってるスーパーマリオ64じゃない(笑)

自分のプレイとは違う・人間のプレイの限界を超えている。まさに、これこそがTASの魅力。自分が直接プレイしたことのあるゲームソフトのTAS動画を見ると楽しいですよ~(笑) 奇想天外摩訶不思議な別世界が広がっていたりします。

基本的にTAS動画はツール・アシステッド・スピードラン、つまり最速クリアを目標としている場合が多いですね。やっぱり最速クリアはロマンですよ! ゲームによっては人間のプレイよりも何十倍も速くクリアすることが可能だったり。

世界的な人気、競技としても活発!

TASは日本だけの文化でなく、むしろ本場はアメリカ。「TASvideo」というホームページがあり、世界中のTAS製作者が動画を投稿しています。

このホームぺージを中心としたTASというのは、それぞれの人が好き放題に行っている独立したものではありません。共通のルールを作り、それに従って行っているもの。

これにより競技としての面白さが生まれています。世界記録とかもあるんですよ!(もちろん、TAS業界でしか通用しませんが) ↓に具体的なルールを引用します。

・電源投入時からタイムを計測する
・セーブデータの使用は原則不可(初期化推奨、隠し要素等を出現させる等の理由で許容されるものもある)
・正規品に近いゲームソフトを使う(改造品やデータの破損しているソフトは使用不可)
・米国版のゲームソフトを使う事が推奨される(バグや仕様の違いによって他国版も許容される。現在では日本でのTASの普及に伴い日本語版が正式に許容されるようになった)
・映像方式(PAL/NTSC)の設定を実機同様のものとする
・BIOS(PSなどで使用される)は正しくなければならない
・ムービーは妥協せずに上質なものを作る事
・隠しコマンドやデバッグコードやアーケードにおけるコンティニューは許容されていない
・ムービー最終入力後に目的(エンディング等)を達成しなければならない
・動画ファイル(AVI,WMV,MP4等)ではなく入力ファイルを提出する事(TASは再現性がなければならない為)

世界中の人間が、1つのゲームの世界最速を競い合う。しかも人間がプレイするのではなく、エミュレーターの機能を利用して。中々に面白い世界では。

「あのゲームの世界記録が3分縮まった!?」とか、ゲームによっては「クリアタイムを1秒更新しました!」みたいなこともありますし(笑)

チート(改造)との違い

ここでチートとの違いを説明しておきます。勘違いされることも多いんですが、TASとチートは別物!

根本的な違いとして、TASはゲームのデータを改造しません。ゲームのデータは普通の人間のプレイと何も変わらないのです。

ツールは色々と使いますが、それはプレイの方法を効率化しているだけであって、データを改造しているわけじゃない。

例を出してみると、「1%の確率でしかでないアイテムがある」とします。チートの場合は「100%の確率でアイテムが出るようにデータを改造する」、TASの場合は「高速でアイテムが出るまでやり直しまくって、アイテムが出たらデータをセーブ(保存する)」という感じ。

TASはコンピューター上で制作されますが、「実際のゲーム機でのプレイでも理論上実現が可能である(起こりうる)」ことが必要だとされます。

普通に人間がコントローラーを使って最速クリアなどを行ったりもしますが、それを究極的に効率化するとどうなるか? 理論上の最速タイムは? というのがTASの方向性。

なので、TASは再現性・共通性が求められるんですよね。チートだと、その状況というのは改造した1つの特殊なデータでしか発生しません。

基本的にTASは発売されたゲームソフトの世界共通の最速タイムを追求しているのです。バグ技を利用したりしますが、これもソフトに共通して存在するバグだけが許される。

まぁ「実際のゲーム機のプレイでも理論上実現が可能」とか言っても、

「Aボタンを1秒間に60回連打しながら十字キーを→→←↑↓→←と入力する」とか「1%の確率でしか出ないアイテムを3連続で手に入れる」「バグ技を使うことでワープ!」

みたいな、むちゃくちゃなことしてますけど(笑) そこが魅力でもありますしね。

TASの制作法

ここではTASの作成方法を紹介。

ムービーの追記

メモリ上のデータを小まめにセーブしながらゲームの操作を記録していき、失敗した時は直前のデータをロードし直して良い結果のみを残す。

一般に動画での公開時には、その追記回数・プレイヤーのクレジットと「This is a tool-assisted movie.(ツールでアシストされた動画)」などを表示することが基本。

このムービーの追記こそがTASの中心だと言えるでしょう。これによって失敗した操作を消して、最適な結果のみをつなぎ合わせることが可能。

追記数が多いゲームでは10万回、場合によっては100万回を超える場合も! TASの動画は成功した部分だけをつなぎ合わせた結果であり、その背後には無数の失敗があるのです。

メモリビューア

メモリ内容を表示させ、特定アドレスのメモリ内容からアイテムの出現やエンカウントなど、ゲーム内の処理内容を把握すること。

つまり、その瞬間ゲームのプログラムがどのように動いているかを目で見えるようにするのです。実際のゲーム機でのプレイではゲーム画面しか見えませんが、そのゲーム画面を作り出している内部のプログラムを直接見てしまう。

パッと見では無駄に思える操作(例えば、突然操作を止めて待つ・その場で高速旋回する・リセットを繰り返すなど)をしてメモリ内の乱数を変更する、いわゆる「乱数調整」を行ったり、メモリを利用したバグ・誤処理を引き出す上で欠かせない機能。

この他、キー操作の最適化などにも使われるとのこと。

フレームレートの操作

スローモーション状態・コマ送りでプレイできるようにすること。ゲームを超低速にすることで正確で細かいプレイが可能に。

ルート構築

TASならではの制作法としては主に↑の3つ。しかし、これらを実行していく前に「ルート構築」という非常に時間のかかる作業もあります。

これは選択肢が多いゲームにおいて、どの順番に行動すれば最速になるかという話。1本道のゲームなら問題になりませんが、できることが多いゲームだとルート構築も非常に大変。バグ技・壁抜けなどをも利用した謎ルートもTASの魅力と言えます(笑)

ルート構築はTASだけでなく人間によるプレイでも重要だけど、理論上最速を目指すTASの場合はより正確なルートが必要に。

このようにTAS制作はルート構築研究と大量の追記が必要になり、ゲームソフトによってはかなりの時間と労力が要求されます。複数人が協力して1年以上かけて作りました! みたいな大作もあるんですよ~。

TASの歴史

ここではTAS製作者、FinalFighter氏の「GamesTech」というサイトの内容の一部省略しながら引用させていただいて、TASの歴史を簡単に紹介。Doomというのはゲームソフトの名前ですね。

1999年
Doomにおける「TAS」の誕生

ツールによって記録する動画を撮ることがはじめて可能になったのです。
このようなツールによって記録する動画のことを「Tools-Assisted Speedruns(TAS)」と呼ぶこととしたのです。

 

2000年
Doomにおけるセーブ箇所からのやりなおし機能の誕生

やりなおしをする際に、やりなおしをしたい場所まで動画を再生するという作業の必要がなくなったのです。

 

2003年
TASの一大ムーブメントの発生

これまでTASを見たことがなかった世界各地の人間が驚き、これは本当に人間のプレーなのか?と驚きました。

その後、「ツールを使って1/10のスピードでやりなおしを繰り返しながら撮っている」とのネタバレが掲載され、TASとはどのように撮るものなのかということが世界中に知れ渡る結果となったのです。

2003年
Nesvideosの誕生

エミュレーターによって撮られたTAS動画をアップし交流する英語サイト「Nesvideos」 を立ち上げました。

現在では「TASvideos」というサイト名になっています。

2006
動画共有サイトによる知名度爆発

また、こういった動画たちが動画共有サイト「Youtube」などにアップされることによりこれまでTASを見たことがなかった層が動画を見るようになった。

日本では「ニコニコ動画」の普及により、「TAS」というジャンルがあるのだなとはじめて知った層がこういった動画を求めて様々なサイトを訪れることとなった。

新しい遊びが生まれてきた歴史、ロマンです。

ゲームならではの新しい遊び方

今までTASのことを簡単に紹介してきましたが、改めて考えると面白いことやってますよね~。

このような遊び方ができるのは電子ゲームだからこそ! ただ見るだけの小説・漫画・アニメ・映画では、こんなことはできません。プレイヤーが操作できるプログラムがあるからこそ、それを最適化するということが可能。

そして、TASの制作にはパソコンが必要だしし、TASが有名になったのはネット上で動画の共有ができるようになってから。電子ゲーム・パソコン・インターネットが登場してきた時代ならではの新しい遊び方だと言えるでしょう。

新しい技術が生まれると、新しい遊びも生まれる! 人間の好奇心・想像力・遊び心ってすごい!

製作者の意図を超えた面白さ

そして、TASなんて遊び方は製作者が予想外だったはず(笑) ゲームソフトってのは人間が遊ぶために作られているのであって「ツールによって最速クリアの世界記録を競う」なんてびっくりするのでは。

TASの面白い点として、「古くなり普通にプレイしてる人がほとんどいなくなったゲームでも、TAS制作は続いていたりする」ことがあります。

例えば、最初に紹介したスーパーマリオ64。これは1996年に発売されたゲームソフトですが、この記事の↑のTAS動画は2012年に公開されたもの。さらには、2015年に公開された記録もあります。

発売から19年! 19年間の間に多数の発見もありTASの世界記録も更新され続けてきました。

19年の間、TAS制作という形ではあるけどゲームは遊ばれ続けてきたわけで。そして、その記録が動画として公開されて世界中に楽しまれている。製作者の予想を超えたところにあるゲームの面白さ、不思議なものですねぇ。

まとめ

・TAS=ゲームソフトをパソコン上で再現しつつ様々な特殊な操作を行うこと、およびそれを利用した競技のこと。チートとは違い、データは改造しない。

・世界的な人気があり、ルールが整備され競技として成り立っている。最速クリアはロマン!

・ムービーの追記が製作の中心。TASの動画は成功した部分だけをつなぎ合わせた結果であり、その背後には無数の失敗が。

・始まりは1999年、2006年ごろから動画サイトによって知名度アップ。

・ゲームならでは楽しみ方。そして、TASが作られるのはパソコンが広がったからこそ。新しい技術が生まれると、新しい遊びも生まれる!

・TASなんて遊び方は製作者が予想外だったはず(笑)

・人間の好奇心、想像力、遊び心ってすごい!

 

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