サモトラケのニケと、ミロのヴィーナス ~不完全ゆえの魅力~

壊れてしまったからこそ、誕生した傑作? 想像力が刺激される作品でしょう!

というわけで、今回は「サモトラケのニケ&ミロのヴィーナス」。壊れてしまった部分があること、世界的に有名な彫刻ですねー。

①サモトラケのニケ

呼び方はフランス語だとVictoire de Samothrace、 英語はNike of SamothraceまたはWinged Victory、 ギリシア語ならΝίκη της Σαμοθράκης

(この記事の画像は全てウィキペディアより)


↑こちらの写真は2013年の洗浄作業の後のもの。比べると大理石の白さが戻ってます。

古代ギリシア文明の女性彫刻で、勝利の女神ニーケーを表現したもの。女神の部分だけで高さは3.28m、下にある台も合わせると5.57m。だいぶ大きいですね! 知ってました? 現在はフランスのルーブル美術館にあります

少し引いてみると、こんな感じ。羽の形や、服の質感と動きの表現が美しい!

流石に、これだけ大きく複雑なものを一つの岩から彫り出せないので、女神像の部分だけでも複数のパーツを組み合わせて作られています

人気のある彫刻なので、世界中にレプリカがあるとのこと。確かにネットで画像検索すると大量に画像が見つかりますね。

また、女神ニケはスポーツシューズのメーカー「ナイキ」のロゴマークの元ネタとしても有名。社名のNike(ナイキ)も、Nike(ニケ)の読み方を変えたものですしね。


↑ナイキのロゴは、女神ニケの翼

再発見のロマン!

この像が「発見」されたのは1863年。ギリシャ共和国のサモトラケ島(現在のサモトラキ島)で発掘されます。

初めに胴体部分が見つかり、その後に断片となった羽が見つかりました。断片は全部で118片! それが修復されて今のようになっているわけで。すごい話

その後、復元された像は1884年にルーヴル美術館の「ダリュの階段踊り場」に展示され、今に至ります。ちなみに、右腕が1950年に発見されルーヴル美術館に保管されているとのこと。手は大きく広げられているらしいですよ。

さてさて、発見という事は「制作」とは違います。この作品についての古い資料はひとつも発見されていないため、様式および傍証から年代を推定することしかできていません。制作された時期については諸説あるようだけど、紀元前なのは間違いなし

つまり、制作から約2000年の時を得て再発見されたってこと。これまた、すごい話! 再発見と修復、とんでもなくロマンがあります

ある意味では、体が不完全な方が「歴史」を強く感じられますよね~。「こんな素晴らしい彫刻が壊れてしまったなんて! 今度こそは保存し続けなくては!」みたいな気分にさせてくれます。

製作者は悲しむでしょうが、見る方としてはちょっとぐらい壊れてた方が雰囲気があるってものかも(笑)

②ミロのヴィーナス

フランス語だとVénus de Milo、英語でもVenus de Milo、ギリシャ語だとΑφροδίτη της Μήλου。

こちらもルーブル美術館に展示されています。

整った顔つき、美しい体のバランス、服の質感。これまた傑作ですね!


↑後姿。かなり脱げかけ(笑)

ミロのヴィーナスはギリシア神話におけるアプロディーテーの像と考えられています。高さは203cm、これも結構大きいですね。

材質は大理石。発見時は碑文が刻まれた台座があったけど、ルーヴル美術館に持ち込まれた際に紛失してしまいました。


↑元々は台座があった

歴史

作者は古代ローマ時代の紀元前130年頃に活動していた彫刻家、アンティオキアのアレクサンドロスと考えられていますが、彼の生涯については殆ど分かっていません。こちらも2000年以上前の彫刻! すごいですねぇ。

ミロのヴィーナスは1820年4月8日にオスマン帝国統治下のミロス島で発見されました。その後、この彫像の素晴らしさに気付いたフランス海軍提督ジュール・デュモン・デュルヴィルが、フランス大使に頼みこんでトルコ政府から買い上げます。

さらに、修復された後にルイ18世に献上され、ルイ18世がさらにルーヴル美術館に寄付し、今に至ります。

ルーヴルに展示されてから、ルーヴルを出て海外へ渡ったことはただ1度だけ! しかも、それは日本! 1964年4月~6月に東京都(国立西洋美術館)および京都府(京都市美術館)で行われた特別展示。知ってましたか?

また、この日本への輸送時に一部破損が発生してしまい展示までに緊急修復されたそう。初めての海外展示で破損! そりゃ、二度と動かしたくありませんよね(笑)

1900年ごろにルーヴルで一度だけ型取りされており、現在もその型を元にレプリカや縮小モデルが作られているとのこと。

不完全ゆえの魅力

さて、ここからは2つの彫刻に共通する「破損・不完全な部分」について考えてみますよ! まず、サモトラケのニケについて。


ご覧のように、この彫刻には両腕と首から上がありません。しかし! それが大きな魅力にもなっているような。

胴体と羽しかない、単純な姿かたち。それによって羽の広がり、胴体の曲線、衣服の動きがより際立っていると感じます。みなさんはどう思われますか?

また、情報が足りていないのは「想像の余地が大きい」とも言えます。顔や手はどんな形だったのか? と、空想してみることができますよね。

次は、ミロのヴィーナス。

こちらは両腕が無くなっています。しかし、それによって非常にミステリアスな雰囲気があるのでは? このヴィーナスはどんなポーズをしていたのか? 想像力が膨らみますよね。

さまざまな芸術家や科学者が政策当初の形を復元しようとしていますが、はっきりとした定説はありません。

しかしながら、林檎を手にしているという話が広く伝わっていて、↓のような復元予想図もあります。

でも、仮に復元予想図のままの彫刻が完璧な姿のままで発掘されていたら、ここまで有名になったでしょうか? 確かに美しいとは思いますが、今の不完全な姿の方が面白いと思いません?

この2つの彫刻は、大きな破損があって不完全。だけど、その「不完全さ」こそが魅力的なのだと私は思います。足りない部分からあるからこそ、想像力が刺激される。

大げさに言えば「見る人によって、また、見るたびに形が変わる」という面白さが。自由に想像できる!

まぁ、もちろん造られた当時は完全な形があります。作った本人が見れば「あれ!? あの完璧な造形が……」なんて思うでしょうけどね(笑)

製作者の意図を超えた、時が作った美しさ

また、この2つの大理石の彫刻は今では真っ白になっています。このシンプルさも魅力ですよね。古代ギリシャ・古代ローマの彫刻は白く美しい

しかし、これまた制作当時の完全な姿ではありません! 実は、単純に色が落ちてしまっただけ。完成当時は着色されていたけど、長い時間のなかで白くなった。

だけど、そのシンプルさが良いんですよ。仮に、この2つの彫刻が「体が完全であり、鮮やかに彩色されている状態」で見つかっていたら、どうでしょう? 今より魅力的で人気になったでしょうか? 私は違うと思いますね。

ある意味では、この2つの彫刻は時間が生み出した傑作なのです。長い時間の流れの中でパーツは破損し、色が消えます。しかし、それによってシンプルで想像力を刺激する傑作が生まれた。

制作者は現在の形を作ろうと思ったわけではありません。製作者の意図を超えたところに誕生した美しさ。そんなことを考えながら見ると、ますます魅力的に見えてきませんか? 時間が生み出した美、ロマンですよ。

 

パルテノン神殿も似たようなものだったり

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青い空に映える、白い建築物! そういうイメージありません? 実は建築当時はそんなことなかったり。

まとめ

・2つともフランスのルーブル美術館にある

・2つとも2000年以上前の作品! 大昔の作品が、今も残っていて人気あるとかすごい

・壊れて不完全になったことで、想像力を刺激する作品になっているのでは。

・真っ白なのもシンプルで美しいが、実は色落ちしただけ。

・完成直後の状態で発見されても、今より人気になったとは思えない

・制作者の意図を超えた美しさが、時の流れの中で生み出された! ロマンでしょ~

サモトラケのニケと、ミロのヴィーナスの紹介解説でした

 

 

ルネサンスの巨匠ミケランジェロも、古代ギリシャ・ローマの彫刻に影響を受けたと言われてます。

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