肖像画と似顔絵 ~人を描く芸術~

昔から人間は自分の姿を色々な方法で残そうとしてきましたが、昔には写真なんて無かったわけで!

というわけで、今回のテーマは「肖像画と似顔絵」。これは実在する人の姿かたちを表現する絵。

実は、絵以外にも肖像彫刻・肖像写真などもあります。つまり、実在する人の姿かたちを表現する=肖像

「肖像画=人間を描く絵」なので、似顔絵も肖像画の一部。英語では、両方ともportrait

ただし、この記事では区別のために「肖像画=西洋風の人物画」「似顔絵=デフォルメされた人物画」だと思ってください。

↓肖像画と似顔絵の例。(この記事の画像は全て、ウィキペディアより)

並べてみてみると、雰囲気に違いがありますよね。両方とも同じジャンルなのに、ここまで表現が違うとは面白い!

 

目次(クリックでジャンプ)
  1. 肖像画の歴史
  2. 似顔絵
  3. 写真と肖像
  4. まとめ

肖像画の歴史

肖像は古代ローマにおいて繁栄しました。当時は彫刻という形が主流。また、徹底的な写実性が要求され理想化はなし。かっこよくない人は、かっこよくないまま!

その後、4世紀ごろから理想化がされるように。写真がない時代なので肖像画で美化してしまえばバレないってわけですよ。今でもフォトショップで加工したする人、いますよね。偉い人の肖像画は後世に伝えられたりしますから、大切!

もちろん、直接会ったことのある人はごまかせませんし当時の日記などで事実が分かったりしてますが(笑)

また、肖像画=権力者・お金持ちなんてイメージがありますが、一般人でも依頼することがあったとのこと。古い物ではローマ帝国時代に作られた、葬儀用の少年の肖像画が見つかっています。↓の絵がそうです~

また、肖像画と聞くと1人の人間だけを描いたものをイメージする人が多いと思いますが、「集団肖像画」なんてのもあったり!


↑こういうの。今で言う記念写真みたいなもの。

ちなみに、自画像も肖像画の一部です。肖像=人を表現する芸術、なので。自画像が広く認められるようになったのは比較的最近のことで16世紀から17世紀にかけて。それまでは作品の中に作者自身を登場させることは良くないとされていました

似顔絵

似顔絵の特徴としては、リアル性だけを追求するのではなくデフォルメも多い点。西洋の絵画は遠近法と陰影を重視するのに対し、日本の絵は平面的であり輪郭線によって形を作ります。地域によって絵の表現が違うってのも面白い。

似顔絵、という言葉の起源は江戸時代。浮世絵の役者絵のうちで役者の個性をとらえて描いたものが特に「似顔絵」と呼ばれるようになったとのこと。浮世絵初期の役者絵は、役者個人の特徴をとらえたものではなかったらしい。

浮世絵中期に役者個人個人の特徴をとらえた浮世絵が登場。それ以降は浮世絵に限らず、人物の顔を似せた絵は「似顔絵」と言われるように。役者似顔絵を得意とした絵師は東洲斎写楽・歌川豊国などなど。

時代が進むと、風刺やパロディの要素を持った漫画やイラストレーションのようなものも登場。写実性だけでなくデフォルメをしてもいいので表現の幅が広い! 逆に美術的には優れた絵でも、特徴を捉えていない物は似顔絵とは言えませんが。

さらに言えば、現代日本の「漫画・アニメ」も似顔絵の流れを受け継いでいると言えるでしょう。人の顔をデフォルメし、特徴を強調する。比較的少ない線と色で人間を表現しやすい!

また、似顔絵は犯罪捜査にも取り入れられています。警察による犯人を指名手配する際の写真が得られない場合などでは「似顔絵」または「整形後の想像画」を用いることが多くあるとのこと。これらを担当する捜査官は似顔絵捜査官と呼ばれます。

似顔絵は顔の特徴を強調するため、写真やビデオ画像よりも犯人の記憶を思い起こしやすく、かえって逮捕に繋がりやすいそう。人間の脳というのは写真のように細部まで厳密に記憶しているわけじゃなく、ぼんやりとしたイメージで覚えてるようなのです。

写真と肖像

さて、肖像画・似顔絵について重要な点として写真と役目が被ることがあります。写真以前は自分の姿を記録するには絵を描いてもらうしかないけど、写真が発明されれば状況は変わる。

肖像画および似顔絵が発達してきたのは写真が無かったからだと言えるでしょう。写真という便利で簡単なものが無かったから代わりに絵で表現してきただけの話。

油絵なんかでリアルな肖像画を描くにはものすごく時間がかかりますが、写真なら一瞬(笑) まぁ昔だと写真を撮った後の現像に時間と技術が必要でしたが、今ではこの部分も簡単かつ一瞬で終わるようになりました。

今では当たり前のことも昔の人にとって大変だった!

そして、写真が使える時代なら人間の姿を記録するためには基本的に写真を使うでしょう。人物を撮影した写真作品は「人物写真」、英語でこれもportrait。

今時、肖像画なんてあまり聞きません(専門店などもあるにはあるようですが)。写真の方が安く正確に早く記録できますからねぇ。卒業写真・証明写真なんかも当然に写真。

「技術の発達によって、芸術の形が変えられた」事例でしょう。技術の発達によって芸術ができることが広がりますが、逆に芸術の役割が減ってしまうこともある。


↑写実性、記録性なら写真の方が上。

しかし、似顔絵の場合は状況が違います。時間をかけて正確に描くことが主目的である西洋風の肖像画とは違い、デフォルメ・強調などで現在でも写真とはしっかり差別化されています。写真と似顔絵の魅力は別なんですよ。

フランスのパリモンマルトルにあるテルトル広場では観光客を相手にした似顔絵画家の人たちが多くいて観光名所になっていたり。

また、↑でも書いたように現在の漫画・アニメは似顔絵の流れを受け継いでいます。リアリティを優先してきた西洋風の肖像画は簡単にリアルを再現できる写真によって衰退してしまいましたが、似顔絵はデフォルメを上手く利用して現代でも活躍していると言えるのでは!

まとめ

・実在する人の姿かたちを表現する=肖像。

・西洋の肖像画=陰影法と遠近法で写実的。日本の似顔絵=デフォルメされていて平面的。

・同じジャンルでも地域によって表現が違って面白いよね!

・2つとも写真と役割がかぶる。写真がなかったから絵で記録するしかなかっただけ。

・写真の方が記録としては優れている。

・しかし、似顔絵の方はデフォルメを上手く利用して現代でも活躍していると言えるのでは

 

 

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