『ハーレム』の本来の意味と、男性主人公に対する考察

始まりは女性のためのもの! 知ってました? さらにハーレム作品の男主人公って不思議ですよね~。

というわけで、今回のテーマは「ハーレム」。英語だとharem。現在の欧米・日本では、男性が多くの女性と親しくしている状態を意味する言葉ですよね

日本ではハーレムもの・ハーレムエンドなんて使われ方も。主人公が複数の女性キャラから好意を向けられる、そんな作品に使われることが多いでしょう

ここから転じて、女性キャラが多くの男性キャラから好意を向けられる、こんな作品を逆ハーレムなんて表現したりもしますね

元々は女性のためのもの!

元々の意味からすれば、現在のイメージ正しくはありません。この言葉はイスラム教に由来していて発音も「ハレム」に近い

ハレムの古い意味は「禁じられた場所」。夫・子・親族以外の男性は入ってはいけない場所、家の中の女性だけの空間を指す言葉。つまり、一般家庭にも「ハレム」はあった!

ハレムは男子禁制の場。イスラム教の考え方である男女の節度を持った隔離を背景にしています。女性が外出する時のヴェールと同じ発想

現在でも保守的なイスラム教の国ではハレムは続いています。サウジアラビアでは結婚後に、男子禁制の妻専用の客間を設置するとのこと。

妻は女友達と共に自由な服装でくつろぐことが可能。王族などのお金持ちの場合は1つつの部屋だけでなく室内プールなども作ることがあるとか

こういったハレムは妻と女性たちのプライベートな空間。男性も干渉するのは良くないこととされます。イスラム教の「ハレム」は女性のためのもの。今の男性のための「ハーレム」とは逆の方向性だった!

まぁもちろん、男女の隔離がそもそも必要なのか? みたいな意見はあるかもしれませんが

実際問題として20世紀以降に女性のの社会進出・男女の平等化が進んでいる国の場合はイスラム社会でも、このような男女隔離は減っているようです

ついでに言うと家庭内で女性だけの空間を作るとか、女性と男性は隔離するべきとか、こういう考えを実現できるのはお金持ちだけでした。

小さい家で女子供も一家総出で働いている場合、ハレムなんて無理ですからねぇ。ハレムにしろハーレムにしろ金持ちのものってことでしょうか……

誤解のもとは権力者のハレム

ではなぜ、このようなハレムが「ハーレム」として西洋に伝わってしまったのか? それは権力者の大規模なハレムが、ハーレムに近い性質があったから

権力者には多くの女性がいたので、宮廷には巨大なハレムが誕生。日本の大奥に近いイメージですね


↑権力者の大規模なハレム

特にオスマン帝国時代になると、君主(皇帝)の権力が安定。わざわざ正規の結婚、妻にこだわる必要がなくなります。

多くの女性がハレムに集められ、最盛期には1000人を超えたとか! このオスマン帝国のハレムが西洋からやってきた人間に注目され、そのイメージが定着していきます

まぁ、この時期のヨーロッパ人は「西洋以外は野蛮で性に自由なんだ!」的なイメージ、いわゆるオリエンタリズムを持っていました。そのせいで、現実以上にエロチックな部分が強調された面もあります

こんな感じで女性のプライベートな空間が、男性の楽園だと誤解・曲解されることになったのですね。今ではこっちのイメージで定着してしまいました。生物学では「オスが複数のメスを独占する群れ」をハーレムと呼ぶそう。ゾウアザラシとかが有名でしょう

日本のハーレム系作品を考える

さてさて、ここからは日本のフィクション作品の話。ラノベ・漫画などでハーレムものって一定の人気がありますよね

やっぱり、たくさんの女の子にモテモテ! ってのは男ならどうしても夢見てしまう状況と言えます(笑) 男性の消費者がいる以上は人気があるのも当然と言えるでしょう

歴史的には初期の漫画などではヒロインが一人だけの純愛が主流でしたが、途中から多様化してハーレム系も増えてきました

製作者としてもハーレムものって作りやすい。まず、美少女キャラをいっぱい登場させられます。キャラのバリエーションが増やせるんですね

また、主人公のそばにいる・協力的である理由も恋心を持っていることにしておくと説明が楽。

ファンタジー作品で例を出すと「どうして主人公と旅をしているの?→主人公のことが好きだから」これで消費者は納得するしかありません。恋ってのは話を作りやすい。

男性主人公の設定

次に、男性主人公をちょっと考察してみます。ハーレム作品の主人公は、性的に奥手なことが多いような。

「周りの好意に気づかない朴念仁」「鈍感でアプローチを理解しない」「女たらしだけど、天然・無自覚である」

「リアリティがない!」「いや、普通は気づくだろ?」なんて突っ込みが入ったりも(笑) なぜ、こんなキャラ設定になるのか? それはハーレム状況を維持するためでしょう!

主人公が周りの好意に敏感で、積極的に手を出してしまう場合。これはエロゲーになってしまいます。18禁なら問題ないですが一般向けだとダメ

複数のヒロインの中から1人を選んでしまう場合。純愛としてはいいけど、ハーレムものではなくなります。最終巻ではこういう展開もありでしょう。でも、途中でやるとジャンルが変わってしまう。

周りの好意に気づいたうえで、自分からは行動せずわざとハーレム状態を維持する場合。これは女心を利用するゲス野郎に(笑)。流石に消費者に嫌われるでしょうね

こんな感じでハーレム作品の男性主人公は、周りの好意に気づかない鈍感人間に設定されることが多い!

同じような理由で、ヒロインの方も直接的で明確な行動をしない傾向があると思います。例えば「1対1で告白する」「ラブレターを渡す」「だれか1人を選ぶように圧力をかける」など

リアリティに欠けるご都合主義だけど、般向けハーレム作品を作るためには仕方ない…

杉浦由美子という人は男性主人公を「空虚な中心」と表現しています。けっこう、的を得ている気がしますね。

ハーレム作品の真の主人公は、魅力的なヒロインたちで、男性主人公はオマケなことが良くありますし

もちろん、こういう設定が多いだけで全部そうではありません。中には「自分から積極的にハーレムを作り、かつ全員を幸せにしようとする」男気のある(?)主人公の作品もあったりも。

まとめ

・元々の「ハレム」は、家の中の女性だけの空間を指す言葉。男子禁制の場。

・誤解されたイメージが広がった理由は、権力者の大規模なハレムがハーレムに近い性質があったから

・ハーレム系の男性主人公が鈍感キャラなのは、全年齢の一般向けハーレム作品を作るため! 主人公が好意に気づいて積極的に手を出してしまうとエロゲーになってしまう。ご都合主義だが、しょうがない……

 

 

こちらもどうぞ

https://souzouryoku.com/love/
『主人公補正』について考えてみる! ~メインキャラクターの特権~
絶対に死なない! 異性に好意を持たれまくる! まぁ、しょうがありません。だって主人公なんだから